年を取ると,マルチタスクが苦手になるのはなぜ?

CNNの記事です.

年を取るほどマルチタスクが難しくなる理由


片手に携帯電話を持ち,もう一方の手で引き出しに手をかける.そこでメールが届いたので読む.その後,なぜ引き出しを開けようとしたかを完全に忘れてしまう.こういったことは誰にでもある.20代の人でさえ経験する.これは,脳の自然な加齢に関係しているのだ.


ある新しい研究が,年齢が上がるとマルチタスクをこなすのが難しくなる理由を明らかにした.米国科学アカデミー紀要に発表された調査によれば,年上の人々の脳は,若い人に比べ,中断した後に元の作業に戻るのに,より多くの困難を伴うという.


著者らによると,中断は全ての人のワーキングメモリー(短い期間,モノを記憶しておく能力)に悪影響を及ぼすと言う.研究者たちは,fMRIを用いて,年上の方が中断の悪影響を受けやすい理由について,以前よりも明確な理解を得た.研究では,平均年齢69歳の健康な成人20人と,18歳から32歳の成人22人との間で脳の活動が比較されている.被験者たちはある記憶作業を与えられる.それは別の作業で中断され,その後元の作業に戻ることを要求される.


年上のグループも年下のグループも,別の作業に対してはだいたい同じ程度の注意を向けるが,年上は,別の作業を忘れて,元の作業に関連する神経ネットワークを再構築するのに,より多くの困難に直面するらしい.

Why it’s harder to multitask as you get older – The Chart - CNN.com Blogs


共著者のアダム・ギャザリー博士によると,マルチタスクをこなす能力はだいたい20代か30代から劣化を始めるとのこと.彼のグループでは現在,この能力を改善するためのビデオゲームの研究に取り組んでいるそうです.


なお,ジョンズ・ホプキンス大学医学部のバリー・ゴードン博士は,次のように結論づけています.

「何かをするときは,中断を避けた方が良い.いろいろと手を出そうとするより,一度にひとつの作業をすべきだ.また,試験勉強をするなら,なるべく長い時間をかけた方が良いだろう」

論文のアブストラクトはこちらにあります.

Deficit in switching between functional brain networks underlies the impact of multitasking on working memory in older adults