英語の時制の数はいくつある?

越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)」に,こんな文章がありました.

「英語の時制はいくつありますか?」と問いかけたとき,即答できる人はあまり多くありません.しかも,考えたすえに「5個」とか「7個」とか,根拠不明の答えがよく返ってきます.

基本時制は現在・過去・未来の3つ.それぞれについて完了形があるので,これで6つ.そのすべてについて進行形がありますから,正解は12個です.

一方,「英語と日本語の「時制・相」について」という論文では,時制は「現在・過去」の2つである,としています.(時制を動詞形態によるものとして,未来形は存在しないと考える)

では進行形や完了形は? というと,それは「相」であると書かれています.

現在時制 過去時制
単純相 V V-ed
進行相 is -ing was -ing
完了相 has V-ed had V-ed

単純相はできごとを時間的広がりのない点として捉える.進行相はできごとが完了に向けて進行中であるか,あるいは同じ動作が繰り返し行われていることを表す.完了相はできごとが完了したことを表す.

英語と日本語の「時制・相」について

文法を専門的に勉強しているのでもない限りどちらの考え方でも良いと思うのですが,日本人(日本語話者)にとってに特に理解しにくい「完了形」を理解するためには,後者の考え方が分かりやすいかな,と思います.

というのも「完了形」を,現在や過去とは別の「時制」とみなしてしまうと,「過去でも現在でもないなら,いつの時点の話なんだ?」ということになって,わけが分からなくなってしまうからです.


「相」は「時制」に加えてより複雑な概念を表している,と考えることで,それを避けることができます.