悲劇の中の桜祭り

BBCの旅行に関するコラム,TRAVELWISEの4月1日の記事です.

記事中に出てくる「Cherry Blossom Festival(桜祭り)」は,英辞郎によれば,「桜は日本文化の象徴となっており、各地に同じ名の同様の祭がある。」とのことです.

今週東京で桜の開花が宣言されたが,それは,地震に襲われた福島の原子力発電所の敷地外で高濃度な放射性物質を含む水が見つかったというニュースのすぐ後だった.日本の東北地方を襲った巨大な地震津波,そしてそれに続く福島原発での爆発によって,日本の旅行シーズンはピークの時期に大打撃を被った.各地での桜祭りは行われる予定だが,海外からの旅行者は,死と破壊,そして放射線の危険と戦っている国を訪れるのをためらっている.


だが,海外の旅行者は,桜を希望の象徴にしようとしている.アメリカでは,ワシントンDCで桜祭りが先週開催され,地震津波による被害者のため,寄付を募る行進とお祈りが行われた.これは年一回開催される祭りで,もともとは日本とアメリカの友情を祝うイベントであり,99年前に日本から桜の木が数千本贈呈されたことに端を発する.今,その贈り物を,同盟国が恐ろしい悲劇から復活するのを助けるのに利用しているのだ.


桜祭りの責任者,ダイアナ・メイヨーは,先週ニュースのインタビューに対し,桜は復興と再生の象徴であると述べた.彼女は祭りの参加者に対して,日本と連帯するとともに,そのことを覚えておくよう呼びかけた.


また桜は,日本の絵画や詩においては「人生の短さ」を表すメタファーとしても利用されてきたと,ワシントンの画廊,フリアー&サックラーのシニアキュレーター,ジェームズ・ユーラックはNPRのインタビューで述べた.桜の花は,寂しげだった木の枝に淡いピンク色の花を劇的なまでに一斉に咲かせ,春の訪れを歓迎する.しかし,咲いているのは2週間ほどで,花は咲いたときと同じように素早く散っていく.まるで人生そのもののように,美しく儚い.


日本では,桜の季節ははるかに重苦しい雰囲気をもたらしている.国際航空運送協会(IATA)の推定では,今年,日本のGDPのうち7%が,観光と旅行によってもたらされるはずだった.4月は,普段であれば観光のピークシーズンだが,今回の自然災害により,日本への観光客の多い,香港,中国,ロシア,韓国,タイ,その他の国々からのツアーはキャンセルされている.ウォール・ストリート・ジャーナルによると,日本航空の国際線利用者は25%減少した.そして,観光客を日本から遠ざけているのは,放射線の驚異だけではなない.奥松島などの日本北部沿岸の観光地は3月の津波によって破壊され,国内の旅行者も,訪れることはできない.


日本が,長引く原子力危機の中で再建復興に取り組む間,桜の木はかすかな希望の光を与えている.危機に次ぐ危機に対応を続ける日本の人々と同様,桜の木々は,混沌の中で気高く聳えている.今週,東京で桜の写真を撮影していた地元在住のオダ・リュウイチは,ロイターのインタビューで,次のようにうまく結論づけた.

「日本人は,桜は人生における基本へと立ち返る必要性を象徴している,と考えているように思います」

BBC - Travel - Cherry blossoms amid tragedy : Cultural Activities, Japan

桜と絡めて,かなり感傷的に日本の状況が述べられています.特に最後のパラグラフでは,

Like the people of Japan responding to crisis upon crisis, the trees stand tall in the middle of chaos.

といったような表現が使われています.


なお,最後の日本人の方の言葉がうまく訳せず,不自然な感じになってしまいました.もう少し意訳すべきだったかも知れません.