日本人は特別なのか?
CNNの記事です.日本人が大好きな,海外から見た「日本人論」です.いろいろな立場の人がいろいろなことを述べてますが,登場する日本人は二人だけです.
どれだけ的を射ているのかどうかは置いておいて,日本は未だ海外にとっては「不思議の国」であるのだなあ,という感想を抱きました.*1
地震と津波のワンツーパンチの後,原発危機が高まるにつれ,東京にあるワタナベ・ゴウのオフィスの館内放送は,先週,徐々に執拗さを増していった.
「初日は,『帰宅した方が良いかも知れません』でした」
住友商事に勤める33歳のワタナベは言う.
「二日目になると『帰宅した方が良いでしょう』.そして三日目に,『帰宅してください』になりました」
しかしワタナベは,毎晩,午前2時までオフィスに残った.年度末の〆切に向けた報告書を完成させるために.
国家的危機を前にしてなお示される,ワタナベの勤勉さは,日本の伝説的な仕事倫理の典型だ.(つまるところ,karoshiが法的に認められている国家なのである.) しかし,世界第三位の経済大国を襲った三重の災害により,良くも悪くも,日本とその文化は,世界中から注目されている.その注目は,次の疑問に集約されるようだ.
「日本人は,特別なのか?」
「日本人は,自分たちでもそれを言うことを好む.我々日本人は,という,日本人論だ」
「敗北を抱きしめて―第二次大戦後の日本人」の著者で,ピューリッツァー賞を受賞した歴史家のジョン・ダワーは語る.
「日本人は,常に自分たちの独自性を強調する.だが,その話題そのものが危険性を孕んでいる」
地震に続いた出来事の多くは,日本の「秩序性」によって説明された.地震と津波に対する途方も無いレベルの事前対策によって,3月11日の災害による犠牲者は,金曜日の時点で,確認された死者10,035人,行方不明者17,443人に抑えられている.もっと悪い数字になることも考えられたのだ.しかし,福島の原子力発電所について現在も行われている要領を得ない説明,政府の最高レベルからすら正確性と適時性を欠いた情報しか出てこないという事実は,曖昧なコミュニケーションを好み,悪い情報を隠したがる日本の文化的特性を表している.
日本に関する専門家たちは,かつて重大な出来事によって近代における日本が行動を起こしてきたように,この災害が日本に行動を起こさせるきっかけになるのかどうか,思いを巡らせている.今回の災害を脇に置いても,この国は幾つかの長引く問題に取り組まねばならないのだ.問題とは,停滞する政治,巨額の国家負債,人口の高齢化である.これらの問題は,第二次世界大戦後の廃墟から不死鳥のように舞い上がった国家を,10年単位に及ぶ経済的衰退へと導いてきた.
「そう,あの冷静さは,このような危機においてはもちろん多大な強みになる.だが,景気後退時には問題になることもある.切迫感を持つべきときには」
ソニーのCEO,ハワード・ストリンガーは,CNNのファレード・ザカリアに対してこう語った.
「そして,私の中にこう思う部分がある.今は切迫感が持たれている.これが,他のことではできないやり方で,日本経済に弾みをつけるだろう,と.これは,日本人の最も偉大な強みの一つなんだ.コンセンサスを重んじる社会だから忘れられがちだが.つまり,少し怒って,それからこう思うんだ.『よし,そろそろやってやろうじゃないか』」
一様性文化
火山に囲まれた地形は,日本文化を形作ることに影響を与えてきた.限られた耕作地が,緊密なコミュニティの形成を促進してきたのである.
「隣人と非常に近接して暮らすことは,日本人の経験に深く染み付いています」
作家でアジア・ソサエティのアソシエイト・フェローであるアレクサンドラ・ハーニーは言う.
「コミュニティに根ざした価値感を持つ文化なのです.個人主義の文化ではありません」
しばしば海外出張に出向き,また北米や中東での生活経験もあるワタナベは,日本を次のように表現した.
「我々は規則が好きで,計画が好きで,アポを取るのが好きです.ソニー,パナソニック,トヨタで有名ですね」
彼が,海外で最も多く尋ねられる質問は何か?
「あなたはニンジャですか?」
文化的なステレオタイプは,日本についてのリポートにおいて,避けがたい.
「東京の記者クラブにはきっと規則があるんだろう.日本について書くときは,『出る杭は打たれる』という引用を記事に含まなければならない,という規則が」
ダワーは,この国の集団倫理を示す諺に言及しつつ述べた.
「この国が,特別に集団志向の社会である,と過度に強調する記述には同意できない.日本の歴史においては,危機に際した場合,非常に特異な,個人主義的反応が見られる」
だが,日本に関する専門家の多くは,まさに現実に,文化的障壁が存在し,それが原発事故に対する緊急の反応を遅らせている,と言う.
「彼らは,あまり率直ではありません.率直さに関しては,原子力業界だけでなく,その他の業界においても変化が必要です」
元GEの原子力関係技術者,スガオカ・ケイは言う.彼は,1977年から1997年の間に,福島原発を「何度も何度も」調査した.
日本の情報問題
しかし,1989年にスガオカは衝撃を受けた.検査のビデオを編集するように言われたのだ.そのビデオには,蒸気管のヒビ割れが映っていた.そしてそれに関する情報は,それが標準手順なのにもかかわらず,公にならなかった.スガオカは後にその情報を公開した.東京電力は検査結果の隠蔽を指摘され,結果として,2002年に3名の役員が辞任することになった.だが,安全基準違反は今も続いている.
福島原発の問題は,日本の「情報問題」を表している.
「悪い情報を公に論じたがらず,もみ消し,偽装する.不運な,あるいはきまりの悪い情報に関しては嘘をつくこともある」
日本で長く暮らすアメリカ人,アレン・ケールは言う.
「原子力業界には明らかにそれが見られる.その他の業界でもそうだが」
「(福島原発の状況について)明瞭さに欠けることが,今のところ,国際報道において多い」
ケールは,文化批評家で,「失われた日本」「犬と悪魔」の著者である.後者の書籍の一部は,日本の原子力問題に焦点を当てている.
「おそらく彼ら自身気づいていないことは,これが彼ら特有のものであり,システムの本質だということだ.彼らは,単に他のやり方を知らないだけなのだ」
日本の芸術においてさえ,その傾向が見られるという.
「彼らは,富士山のシンケイについて語る.シンケイとは,富士山が持つべき完璧な,理想的な形だ.実際の見た目ではなく」
批評家たちは,原因の一部は,原子力産業のような多くの国内産業に対して影響力を握る,複雑にもつれた政府官僚主義にあると言う.これは地震後の状況で明らかとなっている.TIME誌の今週の記事で,ハナー・ビーチは,支援活動を阻害するお役所仕事に対する寛容さを指摘した.製薬会社や物流企業の取り組み,ヘリコプターによる救援などが,適切な許可を得ていないという理由で拒絶されたのだ.
「私が取材したその他の自然災害では,災害から4日以内に,国内や海外からの支援が集中して滞り無く被災地域に届けられた.これは,日本よりはるかに貧弱なインフラしか持たない途上国においてもそうだ.しかし今回の東北地方では,支援はあまりにも遅く,わずかずつしか届いていない」
と,ビーチは書いている.
廃墟からの復活
日本はその歴史において,何度も目覚しい発展を遂げてきた.貿易を求めるペリーに率いられたアメリカの戦艦が1853年に到着したとき,近代化に向けた突貫工事の扉が開かれることになった.
「ペリー以降の現代世界における日本を考えると,この国は,決断すべき際には,卓越したやり方で一丸となってきた」
ダワーは言う.
「西側の帝国主義と植民地主義にうまく対応し,自らも帝国主義国家となった.それから半世紀もしないうちにロシアを破り,台湾を植民地にし,韓国を植民地にした.第一次世界大戦までは,日本は世界の五大勢力の一つだったのだ」
1923年の関東大震災(多くの写真は第二次世界大戦時代のもので,記録日時を誤って保管されている)は,信じられないほどの急成長をもたらした.
「人々は,あらゆる場所で新しい日本について話し合った.このエネルギーは起業家,技術者,芸術家,映画会社など,あらゆる方向から生じていた」
ダワーは続ける.
「だが,それは同時におかしな方向へも向かった.この災害への反応は,軍国主義と海外への覇権主義に繋がっていき,ご存知の通り,結局は破滅した」
第二次世界大戦によって,日本の60以上の主要都市が廃墟と化し,1000万人が住処を失い,そして推計50万人の市民が殺された.それでもなお,個人商店から主要企業にまで至る起業家たちは,武器を鋤に持ち替えて,経済を復興させ,1968年までに日本を世界第二位の経済大国にした.1980年代後半の土地バブル崩壊以前には,日本がアメリカを追い抜くと信じていた人々もいた.それ以降は,未だに完全には回復できていない,長い衰退が始まったのだが.
日本は変われるのか?
先週,ワタナベと東京在住の人々は,第二次世界大戦以来初となる計画停電を経験した.被災地の光景と,ペットボトルの水に殺到する人々と,電力供給の停止は,世界で最も素晴らしい都市のひとつに住むワタナベの快適な生活を脅かしている.
「私は今までに多くの貧しい国を訪れた経験があります.そして,震災は,こういったことが当たり前になってはいけない,という意味で,衝撃的でした」
ワタナベは言う.
「水が無くなるかも知れない,食べ物が無くなるかも知れない,ということです」
これは,この国を長い衰退から復活させる,ソニーのストリンガーの希望する衝撃なのだ.
「これは,我々を,この繁栄の私生児とも言うべき自己満足から,脱却させるだろう」
ストリンガーは述べる.
「なんで他のところに住もうなんて思うんだ? という雰囲気がある.我々は全てを持っていて,快適で,全てはうまく機能している.だから,先ほど述べたように,切迫感が重要なのだ」
ワタナベにとって,電力節約の要請は,ある種の誇りを感じさせるという.
「協力しあえるということに,大きな希望を感じます.私たちが,一緒に何かができるということを実感しています.暗闇の中の光のように.これは,私たちが目覚め,そして変わることが必要だと認識する,とても良い機会になり得るでしょう」
そう言うと,ワタナベは電話を切った.今晩も長い夜をオフィスで過ごす彼の,短い休憩中に.
Are the Japanese different? - CNN.com
*1:And, I wonder if I'm not the only one who feels a slight sense of racism here.