「多読」を続けるコツ

以前,「多読」という勉強法に挑戦して挫折した,という話を書きました.

多読

辞書を引かず,わからない箇所はとりあえず飛ばして,とにかく量をいっぱい読む,という勉強法.比較的簡単な読み物,たとえば語彙制限がしてある書籍(PENGUIN READERS など)で実践するのが良いとされています.


英語上達完全マップで勧められていたこともあって,私も PENGUIN READERS の中から面白そうだと思ったやつを2,3冊買って読んでみました.


が,挫折しました.


やはり語彙を制限しているだけあって,残念ながら読んでいて全く面白くない.ダラダラと「あらすじ」を読んでいるだけ,みたいな気がしました.仕方が無いので普通に(語彙制限の無い)興味がある本を買ってみましたが,今度は難しすぎて辞書無しだとどうにも面白さがわからない.結局,辞書を引き引き読んでます

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ですが,一ヶ月ほど前にとある本を衝動買いし,その影響で再び多読を始めてみました.その本のおかげか今回の多読はそれなりに続いており,今は4冊目を楽しく読んでいます.「勉強しなきゃ」というような義務感を感じることもありません.


その本というのはこれ.

英語は多読が一番! (ちくまプリマー新書)

英語は多読が一番! (ちくまプリマー新書)


著者の主張はタイトルでほぼ言い尽くされていて,多読をするのが英語習得には一番効果的である,というものです*1.補足すると,多読の対象は,小説,物語が良いそうです.

内容としては,知らない単語の意味を文脈から推測する方法が書かれていたり,小説でよく使われる単語がジャンル別にリストアップされていたり,熟語のネイティブっぽい使われ方が解説されていたりします.

その辺りは知っていることも多く,実際のところ,あまり参考にはなりませんでした.


この本でほぼ唯一,そして非常に参考になったところは,多読の対象として挙げられている書籍の難易度分けです.

難易度のレベルは,易しい順に1から5までの5段階に分けられているのですが,それが同じ内容を意味する例文で,具体的に表現されているのです.


レベル1は,こんな感じです.(3歳から5歳ぐらいへの読み聞かせ向け)

Susan took the book. 'It's heavy,' she said.

Peter nodded. 'It's the heaviest book I've ever seen,' he said.

It was a big book. A big red book. It had many pages. Susan opened the book to page one. She saw a picture of a tiger.

'Oh,' she said, 'I don't like tigers.'


スーザン(Susan)が重い本を手に取って,1ページ目の虎の写真を見て「虎が嫌い」と言う,という内容です.


レベル2だと,こんな感じ.(7歳ぐらいまで向け)

Susan reached out a hand and took the book. 'It seems very heavy,' she said, rubbing her fingers over the cover.

(中略)

'Oh, come on, Peter,' she said, 'You know I hate tigers.'


これがレベル5になると,こうなります.(無論,大人向け)

Susan eyed the volume with hesitation before stretching out a reluctant hand. She took it from Peter and balanced it in her hands, like a fisherman weighing his catch. 'Well, it's certainly a lot heavier than I expected,' she said at length, her fingers lingering momentarily on the texture of the cover and moving in a circular motion over the surface, as if trying to absorb the secrets the book concealed within its frail and anient pages.

(中略)

'How dare you, Peter!' she ejaculated forcibly. 'If this is your idea of a joke...! You know I have a phobia about tigers!'


語彙数で何千語まで,とかいう分け方よりも具体的で,なかなかわかりやすいと思いませんか?


実は,私が以前の記事で「辞書を引き引き読んでいる」と書いたのは,この本でレベル5に挙げられているStephen Kingの「Different Seasons」でした.

「Different Seasons」は,昔日本語で読んだことがあった*2ので,辞書を引かなくても記憶に頼れば筋を追うことはできましたが,素のレベル5は,私には難しい気がしました.


そこで次はレベル4に挙げられているJeffrey Archerの「False Impression」と,同じ著者の「Kane & Abel」*3を読みました.


これが大正解で,非常に楽しく読むことができました.

結局のところ,私は語彙制限本を読むようなレベルではないが,少し難しい比喩や慣用表現をすらすらと理解できるほどでもない,ということです.ちょうど良いレベルでかつ自分が面白いと思える本であれば私でも多読を続けることができる,これは非常に嬉しい発見でした.


今は,同じくレベル4に別の本が挙げられているMary Higgins Clarkの「Daddy's Little Girl」を読んでいます*4


Apt Pupil: Different Seasons

Apt Pupil: Different Seasons


False Impression

False Impression


Kane and Abel

Kane and Abel


Daddy's Little Girl

Daddy's Little Girl


なお,私は以前から,多読という勉強法,すなわち分からない単語や熟語があっても辞書を引かず,意味を「推測しながら読む」ということに対して,「それでその本の楽しさを本当に理解できるのか? 分からない箇所は辞書を引いて,一字一句きちんと理解しながら読む方が,その本をより『正当に』楽しめるのではないか?」という疑問を抱いていました.

ある意味,「多読で済ませてしまうのはもったいない」という風に感じていたのです.


ですが,自分が気楽に読めるレベルの小説を,ある程度のスピード感を保ちつつどんどんと読み進めるのもまた楽しい,ということに気づきました.


これからも,かけられるお金の許す範囲で,この楽しさを味わっていこうと思っています.

*1:この主張自体については私はあまり同意できませんが.

*2:というか大好きで何度も何度も読み返していた

*3:これも昔,日本語で読んだ

*4:出張中,サンフランシスコ空港の売店で目に付いたので,買いました